摩利支天

 摩利支天の名前を耳にしたことはあると思うのですが、パッと摩利支天をイメージできる方は少ないのではないでしょうか。ここでは摩利支天について簡単にご紹介させていただきます。

 

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摩利支天像 ギメ東洋美術館

 摩利支天は仏教の守護神である天部の一柱です。光線・陽炎を神格化したもので、もと梵天などの子と称し、インドの民間に信仰された神です。障害を除き利益を増すともいわれています。帝釈天と阿修羅の戦の際に日月を護って阿修羅を迷わしたと伝えられています。日本の中世には武人の守護神として信仰されました。

 日本での造形例は少ないのですが、その形像には二臂像・三面六臂・三面八臂像があります。

 

 ・二臂像では天女形や左手に天扇(払)を持ち、その中に卍字が書かれてあり、蓮華座(金色猪身)に座るもの。

 ・三面六臂像では、身は紫金色、青天衣を着て荘厳され、三面各三目、頂に宝塔、正面は黄金色で微笑、左面は黒色、舌を出す大醜悪相、右面は円満清浄相。左手に弓・線・無憂樹の杖、右手は箭・針・金剛杵を持っています。

・三面八臂では,身は閻浮檀金のように放光し、頂に宝塔、紅天衣をつけて各種荘厳具を備え、三目。左手は羂索・弓・無憂樹杖と線、右手に金剛杵・針・鉤・箭を持つ。正面は善相で微笑し、左面は忿怒相、右面は深紅色で大光明を放つ。また左右2面を猪面、持ち物が相違する。猪にのり疾走する。

 

道教ではこの尊格を元にした斗母という尊格が存在します。

 

 

愛染明王


 密教には愛染明王という尊格がいます。この尊格については情報が少ないため、恥ずかしながら自分のわかる範囲でまとめていきたいと思います。

 

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愛染明王坐像 東京国立博物館

 愛染とは執着する心・愛欲にとらわれることを意味します。明王とは、仏法を信じず救い難い者を仏教に帰依させ救済する尊格の事です。つまり愛染明王とは、愛欲など心の迷いがそのまま悟りにつながることを示す明王のことです。恐ろしい表情をしていますが、その実は愛をもって衆生を解脱させる意趣があります。

 円形の光背をつけ、三目六臂で獅子冠をかぶり、金剛鈴、弓、拳、五鈷杵、箭、蓮華を手にし、蓮華座上に結跏趺坐して、身体は赤で表現されています。ここで持ち物について解説すると

 

・金剛玲:諸尊を目覚まし、有情(感情を持つ生き物)を戒めるために振る鈴

・箭:弓の矢のことで、煩悩にたとえられています。

・弓:愛染宝弓。明王智慧が箭のように速やかに凡夫に及び、その邪心を除き仏道に導きます。

・五鈷杵:煩悩を粉砕する菩提心の象徴として用いられる武器。

・蓮華:衆生本有(悟りが自身にもともと備わっていること)の心を表しています。

 

となります。

 欲を否定するのではなく、その欲のエネルギーを悟りへ持っていく愛染明王。一見すると恐ろしいですが、人間の欲望を否定しないところからも、親しみの持てる尊格ではないでしょうか。

 

 仏教についてより詳しく知りたい方には以下の本をオススメさせていただきます。仏教を学び始めるとき、手元にあるだけで大助かりです。