愛染明王


 密教には愛染明王という尊格がいます。この尊格については情報が少ないため、恥ずかしながら自分のわかる範囲でまとめていきたいと思います。

 

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愛染明王坐像 東京国立博物館

 愛染とは執着する心・愛欲にとらわれることを意味します。明王とは、仏法を信じず救い難い者を仏教に帰依させ救済する尊格の事です。つまり愛染明王とは、愛欲など心の迷いがそのまま悟りにつながることを示す明王のことです。恐ろしい表情をしていますが、その実は愛をもって衆生を解脱させる意趣があります。

 円形の光背をつけ、三目六臂で獅子冠をかぶり、金剛鈴、弓、拳、五鈷杵、箭、蓮華を手にし、蓮華座上に結跏趺坐して、身体は赤で表現されています。ここで持ち物について解説すると

 

・金剛玲:諸尊を目覚まし、有情(感情を持つ生き物)を戒めるために振る鈴

・箭:弓の矢のことで、煩悩にたとえられています。

・弓:愛染宝弓。明王智慧が箭のように速やかに凡夫に及び、その邪心を除き仏道に導きます。

・五鈷杵:煩悩を粉砕する菩提心の象徴として用いられる武器。

・蓮華:衆生本有(悟りが自身にもともと備わっていること)の心を表しています。

 

となります。

 欲を否定するのではなく、その欲のエネルギーを悟りへ持っていく愛染明王。一見すると恐ろしいですが、人間の欲望を否定しないところからも、親しみの持てる尊格ではないでしょうか。

 

 仏教についてより詳しく知りたい方には以下の本をオススメさせていただきます。仏教を学び始めるとき、手元にあるだけで大助かりです。